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近江八幡「みいちゃんのお菓子工房」親子の記録が日本自費出版文化賞を受賞

書籍が自費出版文化賞の個人誌部門を受賞した杉之原さん

書籍が自費出版文化賞の個人誌部門を受賞した杉之原さん

 杉之原千里さんが執筆した書籍「みいちゃんのお菓子工房 12歳の店長兼パティシエ誕生~子育てのアンラーニング~」が9月4日、「第29回日本自費出版文化賞」の個人誌部門賞を受賞した。

「みいちゃんのお菓子工房 12歳の店長兼パティシエ誕生~子育てのアンラーニング~」

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 同賞には全国から824点の応募があり、第1次・第2次選考を経て7部門70点を入選候補作品に選出。最終選考委員会で各部門1点の部門賞を決め、同書を個人誌部門賞に選んだ。

 同書は、学校に行くことが難しくなった娘・みいちゃんと家族の歩みを母親の視点からつづったノンフィクション。みいちゃんは6歳のときに自閉スペクトラム症と診断され、不安の強さや場面かん黙などの特性を抱えながら成長した。学校という環境への適応が難しくなる一方、幼い頃から好きだったお菓子づくりでは力を発揮。12歳のとき、自宅の一角に「みいちゃんのお菓子工房」(近江八幡市上田町)をオープンした。

 2023年に執筆を始めた杉之原さんは実質約1年半をかけて断続的に書き続け、2024年2月に同書を自費出版した。複数社から商業出版の提案があったが、自身と娘の人生を扱った内容であることから、権利と表現の主導権を自ら持ちたいと自費出版を選んだという。

 執筆では、限られたページ数の中でどの出来事を取り上げるか悩んだほか、ノンフィクションのため過去の苦しい時期を振り返る負担もあったという。杉之原さんは「書くために思い出すと、その時の感情がよみがえってきて、涙が出て執筆の手が止まった時期もあった」と振り返る。

 今回の受賞について杉之原さんは「販売数以上に、親子の生き方や道を切り開く過程が認められたことに意義を感じている」と話す。「私たち親子が歩いてきた道には、前例がなかった。先が見えない中で、小さな出口を見つけ、そこからはい上がるように親子でもがき続けた。この本に描いたのは、そんな親子と家族の物語であり、ハンディのある一人の娘が、自分の生きる道を作っていった記録」とも。

 同書では、開店するまでの困難や、できないことの克服を先に求めるのではなく、「できること」から社会との接点をつくっていく過程を描いている。みいちゃんだけでなく、双子の兄である「かーくん」を含む家族の歩みも記録した

 「みいちゃんとの経験を一人だけの物語に終わらせたくない」と杉之原さんは現在、次の世代につなげる活動にも取り組んでいる。今年設立したTANEBIというプロデュース会社では不登校や障害など、さまざまな背景を持つ人が自身の経験や「好き」を育て、創作や講義、発信などを通じて、それぞれが持つ可能性を見いだすための伴走支援を行っている。「みいちゃんの姿に共感した子どもが親を連れて店を訪れ、相談につながる例もある。書籍にしたことで、子どもの可能性を見つけて後押しする親への支援の必要性を多くの人に伝えることができる。勝手にケーキ店を始めて、勝手に本を書いたが、受賞したことで、その生き方を評価してもらえたと感じている」と話す。現在19歳のみいちゃんは養護学校を卒業し、今年から社会人となった。今後については、ケーキ店で働くことだけに限定せず、本人ができることを探りながら社会参加の形を検討しているという。

 「ケーキ店は到着点ではなく、みいちゃんや参加者が外で活動した後に戻ってこられる居場所。ここを新しい挑戦を生み出す拠点として使い続けたい」と杉之原さん。「みいちゃんが歩いた道を、みいちゃんだけの道で終わらせたくない。これから何十年かかっても、次に続く若者たちが歩けるように、その道を耕しておきたい。私たち親子が必死に耕してきた道の上を、次の子どもたちが歩いていけるようにしたい」と意気込む。

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