近江八幡市西庄町の民間救急「NsTAC(ナスタック)」が11月7日、開業から半年を迎えた。緊急性の低い傷病者の通院や転院などを搬送する「民間患者等搬送事業」を展開する。
市内在住の田中佑樹さんが「移動が困難な人を助けたい」との思いで立ち上げた。民間救急のほか、要介護認定を受けていなくても歩行が難しい人を運ぶ「介護タクシー」、病気やけが、高齢者の生活支援を行う「救援事業」も行う。料金は近畿運輸局認可の運賃に基づき、距離や時間で算出。介助料やストレッチャー、医療用酸素など資器材の使用料は別途必要となる。
開業後は口コミや医療機関、ケアマネジャーからの紹介で利用が広がり、現在は月約30件の搬送を行う。利用者には、病院帰りに花を購入して墓参りに向かう人や、自宅の庭を見に行く終末期の患者、買い物の支援が必要な臨月の妊婦などもいたという。看護師資格を持つスタッフが対応することで、人工呼吸器を使用する人や要介護者も安心して利用できる体制を整えている。
田中さんは介護福祉士として約5年、看護師として15年以上勤務し、訪問看護を通じて移動に困る人の多さを感じたという。「病院勤務ではできない支援がある。地域の中でできる医療の形をつくりたい」と話す。出産や育児、定年などで現場を離れた看護師の新たな働き方を支援したい考えもあり、「民間医療は要請時のみ出勤でき、在宅を基本とした働き方も可能。資格を持つ看護師は特に歓迎したい」と話す。
「民間救急の存在をもっと知ってもらい、医療と介護の途切れない移動支援を広げていきたい」と田中さん。「救急車を呼ぶか迷ったときに相談できる『#7199』や、小児救急電話相談『#8000』の存在も知ってほしい」と呼びかける。